タロットでのシャドウワークとは、カードを使って、自分の中のあまり見たくない部分を見つめることです。認めたくない嫉妬、飲み込んでいる怒り、ちょっと恥ずかしいと思っている野心。カードの絵がそうした気持ちの受け皿になってくれるので、深夜3時に頭の中で言い争うのではなく、少し距離を置いて観察できます。
この記事では、カール・ユングのいう「影」とは何か、安全に取り組むためのコツ、影を揺り起こしやすいカード、オリジナルの5枚のスプレッド、心がざわつくときの3枚のスプレッド、ノートに書き出すための27の問いかけ、そして眠りにまで持ち込まないためのセッションの締めくくり方を紹介します。
タロットが初めてなら、まずタロットカードの読み方を読んでみてください。とはいえ、シャドウワークにすべてのカードの意味を知っている必要はありません。絵を見たときの自分の反応こそが材料です。
「影」とは何か
この考え方は、スイスの精神科医カール・ユングに由来します。ユングのいう「影(シャドウ)」とは、意識している自分が「これは自分だ」と思っていない人格の一部です。受け入れてもらえないと学び、見えないところへ押しやった性質がそこにしまわれています。「いい子にしなさい」と言われた子どもの怒り、「しっかりしているね」とほめられてきた人の甘えたい気持ち、家族の中で「手伝い役」だった人のわがまま、などです。
見えなくなっても、消えたわけではありません。ユングは、自分のものと認めなかった性質が「投影」として戻ってくることに気づきました。つまり、それを他人の中にくっきりと見てしまうのです。「いつも注目の的でいないと気がすまない」同僚にいらいらするのは、あなたの中の生きられていない部分が、少しはスポットライトを浴びてみたいと思っているからかもしれません。
ですから、手がかりは強い反応です。小さなことで大きな感情がわき上がったとき、あるいは「私なら絶対にしない」と口にしている自分に気づいたとき、そこには見つめる価値のある何かがあるかもしれません。いつもではありません。ときには、その同僚が単に失礼なだけのこともあります。
忘れられがちなことがひとつあります。影は暗いものだけではありません。ユング派の書き手の中には「ゴールデン・シャドウ(黄金の影)」について語る人もいます。自信、創造性、休む権利など、良い性質もまた、私たちは自分のものではないと切り離してしまうのです。それはよく、胸が痛むほど強い、誰かへの憧れとして表れます。
タロットがシャドウワークに向いている理由
タロットデッキは、さまざまな状況にいる人々を描いた78枚の絵です。だからこそ、シャドウワークにいちばん必要なもの、つまり反応する対象を自分の外に用意するのがとても得意です。ソードの5を見て、自分がどちらの味方をするかに気づいてみてください。薄笑いを浮かべて剣を拾い集める男でしょうか、それとも去っていく2人でしょうか。その反応が情報です。
ここでは投影をあえて使っています。パートナーにではなくカードに投影するのです。カードなら、それで傷つくことはありません。
しかもデッキは、明るいことばかりを語ってはくれません。大アルカナでは、「悪魔」、「塔」、「星」、「月」の4枚が続いて並び、つらいカードのちょうど真ん中に希望があります。どのスートにも難しいカードがあります。ソードだけでも、心配、残酷さ、裏切り、敗北がそろっています。そうしたカードが出ると、いつもは遠回しにしか話せないことについて話してもいいのだと、背中を押してくれます。
逆位置を使うなら、それも助けになります。多くの読み手は逆位置のカードを、妨げられたエネルギー、隠れたエネルギー、内側へ向いたエネルギーとして扱います。これはほとんど定義からして影の領域です。読み方のいろいろは、逆位置のタロットカードの読み方のガイドで紹介しています。
始める前に:ゆっくり、やさしく
シャドウワークは心をかき回します。それこそが目的であり、だからこそ少し気をつけて取り組む価値があります。深刻になる必要はありませんが、分別は持って。
ペースを守る
スプレッドはひとつ、質問もひとつ、時間は20〜40分ほど。週に1〜2回で十分です。1枚のカードで多くのものがわき上がってきたら、そこでやめましょう。
始める前と終えたあとにグラウンディングする
シャッフルの前に、両足を床につけて座り、ゆっくり何度か呼吸します。終わったら、体を使うありふれたことをしましょう。水を1杯飲む、何か食べる、外に出る、手を洗う。気持ちが揺れているなら、目に見えるものを5つ、聞こえるものを4つ挙げてみてください。単純ですが、効きます。
アフターケアを決めておく
リーディングが終わったら何をするか、前もって決めておきましょう。散歩、シャワー、友だちへの電話、気楽な番組を1話。朝が早い日の前の真夜中にシャドウワークのスプレッドを始めたり、すでに心身が空っぽのときに始めたりするのはやめておきましょう。
これが何ではないかを知っておく
タロットは内省のための道具で、セラピーではありません。パターンに気づく手助けはできても、専門の訓練を受けた人のように、その過程であなたを支えることはできません。リーディングがトラウマや虐待、抱えきれないほど大きな悲しみに触れたら、それは資格を持つセラピストと取り組み、カードはしばらくしまっておくべきだというサインです。両方を続けている人もたくさんいます。重い作業はセラピーで、その合間の好奇心はカードで、というふうに。
気持ちが沈み込んだら:セッションのあとで絶望的な気持ちになったり、安全だと感じられなかったり、どうにもならないと感じたりしたら、手を止めて誰かに連絡してください。友だち、かかりつけの医師、あるいはよりそいホットライン(0120-279-338、24時間・通話料無料)のような相談窓口でもかまいません。日本の外にお住まいなら、お住まいの地域の相談窓口へ。緊急事態になるまで、支えを求めるのを待つ必要はありません。
影のテーマを示しやすいカード
どのカードからでも影についての対話は始められますが、それが起きやすいカードもあります。それぞれが示しやすいものと、よりやさしい受け止め方をまとめました。
| カード | 示しやすいもの | やさしい読み方 |
|---|---|---|
| 悪魔 | 執着、欲求、支配、「やめられない」と言っているもの | 鎖はゆるんでいます。それに気づくことが最初の一歩です。 |
| 月 | 恐れ、思い込み、暗闇の中で自分に語る物語 | 恐れていることのすべてが現実ではありません。景色がはっきりするまで、ゆっくり進みましょう。 |
| ソードの9 | 不安、罪悪感、眠れなくなるほどの考え | 剣は壁に掛かっているだけ。眠る人に触れることはありません。 |
| ソードの5 | プライド、何としても勝とうとすること、あるいは傷ついて去る側であること | 自分がどの人物なのかに気づき、その争いに価値があるかを問いましょう。 |
| ソードの7 | 秘密、自己欺瞞、うまく逃げおおせること | 自分に言いきれていないことは何? |
| カップの5 | 後悔、悲しみ、うまくいかなかったことへのこだわり | 背後には、まだ2つのカップが立っています。 |
| カップの4 | 無気力、引きこもり、差し出されたものを断ること | まだ気づいていないカップを、ひとつの手が差し出しています。 |
| ソードの2 | 回避、目隠し、見ようとしないこと | 剣を下ろすかどうかは、いつでも彼女が選べます。 |

コートカードの逆位置
コートカードは人物なので、便利な鏡になります。逆位置では、性質がこじれたり、隠されたりした姿を見せることがよくあります。周りの人の気分を吸い込んで自分の必要を忘れてしまうカップのクイーンの逆位置、自信が支配に傾いたワンドのキングの逆位置、考える前に言い返すソードのナイトの逆位置。それが知っている誰かなのか、そうなるのが怖い誰かなのか、それとも自分に許していない誰かなのかを問いかけてみましょう。コートカードの読み方のガイドで、それぞれの見方を解説しています。
難しいカードを最悪の方向に読まないために
難しいカードが示すのはパターンであって、判決ではありません。「悪魔」はあなたが悪い人間だとは言っていません。何かにとらわれていると言っているのです。「悪魔」のカードの絵をよく見ると、2人の首にかかった鎖は、持ち上げれば外せるほどゆるんでいます。ソードの9には暗闇で目を覚ましている人が描かれていますが、剣がその人に触れることはありません。
役に立つ習慣をひとつ。難しいカードが出るたびに、「これについて、自分にできるいちばん小さくてやさしいことは何?」とも問いかけてみましょう。そうすれば、リーディングが悪いほうへ渦を巻かずに、前へ進み続けます。
5枚のシャドウワーク・スプレッド
このスプレッドは下へ降りてから、また上へ戻ってきます。ランタンを手に地下室へ降り、また階段を上がるようなものです。5枚のカードをV字に並べます。左側に下っていく2枚、底に1枚、右側に上っていく2枚です。シャッフルしながら、ひとつのテーマを心に置きましょう。たとえば「なぜ批判されるとこんなに打ちのめされるのか」「お金について何を避けているのか」などです。
- 仮面:このテーマについて、とくに周りに見せている自分の顔。
- 遠ざけているもの:自分のものと認めたくない性質、感情、願い。
- それが守っているもの:その部分がなぜ地下にもぐったのか、あるいは何を守ってきたのか。
- 隠れた贈り物:それと戦うのをやめたら、そのエネルギーが何を与えてくれるか。
- 光へ戻る道:それを明るいところへ連れ出すための、小さくてやさしい一歩。

各ポジションの読み方
1枚目はたいてい、すぐに「これは自分だ」とわかります。それは意図したものです。2枚目がこのスプレッドの核心です。嫌いなカードが出たら、むしろ好都合。その「嫌い」がデータになります。
3枚目は思いやりを求めます。影の性質の多くは、そのときには筋の通った理由があって隠れました。たとえば、怒ると家の中がもっと悪くなると学んだ子どものように。「自分のどこがおかしいのか」ではなく、「この部分は何をしようとしていたのか」と問いかけてみてください。
4枚目でリーディングの向きが変わります。「悪魔」でさえ、役に立つものを持っています。欲求、快楽、何かを欲しいと思う素直さです。5枚目は実際的で小さなものにしましょう。大アルカナの大きなカードが出たら、小さく縮めます。火曜日の10分間の「力」は、どんな姿でしょうか?
心がざわつくときの3枚のスプレッド
誰かのことが妙に気にさわるのに、その理由がわからないときに使うスプレッドです。その人とその場面をはっきり思い浮かべてから、3枚のカードを横一列に引きます。
- 相手がしたこと:カードから見た、心に刺さったふるまい。
- それが私の中で触れたもの:それがつついた古い感情や、切り離していた性質。
- 私が取り戻せるもの:自分のものとして引き受け、癒やし、自分に許せる部分。
たとえば、友だちがまたしても直前で約束をキャンセルしたことに腹を立てている人が、カップの4、カップの5、「隠者」を引いたとします。友だちが引きこもること(カップの4)が、仲間外れにされたという古い悲しみ(カップの5)をつついています。最後の「隠者」は、この人自身もひとりの時間を強く求めていて、自分には許していないものを友だちが手にしていることに腹を立てているのかもしれない、とほのめかしています。
だからといって友だちのふるまいが許されるわけではありませんが、怒りの理由はずっと理解しやすくなります。手元にデッキがない? 無料の3枚引きスプレッドが使えます。過去・現在・未来の代わりに、これらのポジションを当てはめてください。
読み解き例
職場でみんなに頼られている、面倒見のいい人を想像してみてください。その人は、会議のたびに自分の仕事を大きくアピールする同僚に、内心ひどくいら立っています。「なぜこの人がこんなに気になるのか」をテーマに5枚のスプレッドを並べ、次のカードを引きました。
- 仮面:ペンタクルのクイーン。有能で、面倒見がよく、すべてをまとめている人。ここは意外ではありません。
- 遠ざけているもの:ワンドの6。月桂冠をかぶり、群衆に喝采される騎手。見てもらいたい、ほめられたいという願いです。
- それが守っているもの:ソードの9。評価を求めたら、傲慢な人、嫌な人になってしまうのではという心配。
- 隠れた贈り物:「太陽」。温かさ、人目につくこと、言い訳せずに見られる自信。
- 光へ戻る道:ペンタクルの3。一人ひとりの役割がきちんと名指しされるチームの中で、腕のいい仕事が認められること。
まとめて読むと、同僚は悪者というより鏡に見えてきます。面倒見のいいこの人は、評価されたいという健全な願い(ゴールデン・シャドウ)を切り離していて、ソードの9はそれを閉じ込めている恐れを示しています。ペンタクルの3が示す具体的な一歩は、次の会議で、自分が何を担ったかを率直に言うことです。
このリーディングが、この人を「実はうぬぼれている」と決めつけていない点に注目してください。引き受ける価値のある気持ちをひとつと、小さな行動をひとつ示しているだけです。良いシャドウワークのリーディングとは、そういうものです。
シャドウワークのための27の問いかけ
1回のセッションで問いかけをひとつ選ぶか、カードを1枚引いて、そのカードのグループを使いましょう。すばやく書き、手直しはしないこと。最初に出てきた答えが、たいていいちばん正直な答えです。
「悪魔」:執着と欲望
- やめたいと言いながら、つい戻ってしまうものは何?
- 本当は鎖がゆるんでいるのに、「選択肢はない」と自分に言い聞かせているのはどこ?
- 罪悪感を覚える楽しみは何? そう感じるように教えたのは誰?
- 本当に欲しいものを認めたら、何が変わらなければならない?
「月」とソードの9:恐れ
- 夜にはいちばん大きく、昼間にはいちばん小さく感じる恐れはどれ?
- 一度も事実と照らし合わせたことのない、自分についての物語は?
- 罪悪感を抱いていることは何? それは本当に自分が背負うべきもの?
- 友だちからこの心配を打ち明けられたら、何と言ってあげる?
- 忙しくしていることで、見ないようにしているものは?
ソードの5とソードの7:対立と正直さ
- この前の言い争いで、私は正しくありたかった? それとも理解してほしかった?
- 何かに勝って、その代わりに別の何かを失ったのは、最近ではいつ?
- いちばん身近な人たちに、言いきれていないことは何?
- ほかの人には決して許さないのに、自分には甘くしているのはどこ?
- 安心できる誰かひとりに打ち明けたら、軽くなりそうな秘密は?
カップの5とカップの4:悲しみと引きこもり
- 見つめ続けるあまり、まだ立っているものが見えなくなっている喪失は?
- 受け入れたら「それが必要だ」と認めることになるから、断っているものは?
- 誰のため、何のために顔を出すのをやめた? それはなぜ?
- 退屈だと感じるのをやめたら、何を感じなければならない?
コートカードの逆位置:自分の中の人たち
- 最悪の日の自分を表すのは、どのコートカードの逆位置?
- 身近でいちばんいらいらさせられる人は誰? その人のどんな性質を自分も持っている?
- 子どものころにほめられた性質は? 隠すことを覚えた性質は?
- ひそかに「自分はこうでなければいい」と願っているのは、どんな人?
「太陽」とワンドの6:ゴールデン・シャドウ
- 憧れるあまり、ちくりと胸が痛むのは誰の成功?
- 目立ちたがりに見えることを恐れていなければ、何をする?
- いつも受け流してしまうほめ言葉はどれ?
- 好かれるために、自分のどの部分を控えめにしてきた?
- ありふれた1日だけ自分を輝かせてもいいとしたら、最初に何をする?
セッションの締めくくり方
シャドウワークのリーディングは、あとに何かを残すことがあります。シンプルな習慣で、セッションが終わったことを頭に伝えましょう。
- 1文だけ書く。何に気づいたかを、飾らない言葉で。結論ではなく、メモとして。
- 選んだカードで終える。デッキからあえて「星」や「節制」を選び出し、1分ほど表向きに置いておく読み手もいます。引くのではなく、句点を打つのです。
- スプレッドをデッキに戻してシャッフルする。カードは、ただのカードに戻ります。
- 体を動かす。伸びをする、水を飲む、何か食べる、窓を開ける。
- そっとしておく。深夜2時にメモを読み返さないこと。気持ちが落ち着いた数日後に、もう一度見てみましょう。
翌朝、今日の1枚を軽く引いてみると、気持ちの確認にちょうどいいでしょう。何度かのセッションで同じカードが出続けるなら、同じタロットカードが何度も出る意味のガイドが、その理由を探る助けになるかもしれません。
1年の暗い半分とシャドウワーク
毎年10月にシャドウワークが注目されるのには理由があります。北半球では夜がどんどん長くなり、10月31日の日没から11月1日まで続くゲール人の祭りサウィンが、1年の暗い半分の始まりを告げます。現代の魔女の多くは、この時期を振り返りと手放しのときとしています。南半球では春にあたるので、そこに住む読み手の多くは、5月1日ごろにサウィンを祝います。

この季節のカードは、シャドウワークによく合います。場所をあける終わりの「死神」、内側へ向かう「隠者」、新しい角度から自分を見る「吊るされた男」。まずサウィンのタロットスプレッドを試し、数日後に、サウィンのスプレッドの「手放すもの」のカードをテーマにして、シャドウワークのスプレッドを並べてみましょう。
シャドウワークとタロットのよくある質問
タロットでのシャドウワークは安全ですか?
ほとんどの人にとって、タロットを使ったやさしいシャドウワークは、ノートに書き出すのと同じような内省の練習です。ゆっくり進め、終わったらグラウンディングをし、圧倒されそうになったらやめましょう。トラウマや心の病気を抱えているなら、カードとひとりで向き合うのではなく、資格を持つセラピストと一緒に取り組んでください。
シャドウワークにいちばん向いているタロットカードは?
定番の影のカードは「悪魔」です。正位置では何にとらわれているかを示し、逆位置では影と向き合って自由になることを意味することが多いカードです。恐れや自己欺瞞については、「月」がそれに次ぎます。
初心者でもタロットでシャドウワークはできますか?
はい。絵を見たときの反応が材料なので、すべてのカードの意味を知っている必要はありません。5つのポジションすべてを試す前に、1枚引きとひとつの問いかけ、あるいは心がざわつくときの3枚のスプレッドから始めてみましょう。
シャドウワークのリーディングで明るいカードばかり出たら?
自分の反応を見てみましょう。「太陽」がうっとうしく感じたり、手が届かないように感じたりするなら、それはゴールデン・シャドウの声かもしれません。明るいスプレッドが、単に今日は掘り下げる日ではないという意味のこともあります。それでいいのです。
リーディングで逆位置のカードは影を意味しますか?
自動的にそうなるわけではありません。逆位置は妨げられたエネルギーや隠れたエネルギーを示すことがあり、それはよく影と重なりますが、遅れやカードの控えめな形を意味することもあります。逆位置のタロットカードのガイドで、さまざまな読み方を解説しています。




